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前置(名詞の前に置かれた場合) |
後置(名詞の後に置かれた場合) |
世界観
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ある視点から見た主観的な世界、深くて濃い世界、詩の世界
詩の世界のような、話し手からみて「こうである」という主観性や「なんと~であることか!」という感情を表現する(単なる性質の描写ではないため、estar 動詞を使うことが多い)。
話者の視点、あるいは聞き手との共通の視点・認識を仮定する。
形容詞により表現された既知の概念をさらに深める(非制限的)。
名詞の性質や概念を修飾。
固有名詞を含む、特定度の高い名詞を修飾。
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特定の視点を持たない客観的な世界、広く浅く薄い世界、現実の世界
「~はこうである」という「こうである」の部分を述語的に表現(一般的な性質・様態の描写であるため ser 動詞を使う)。
特定の視点を含まず、あくまでも一般的、客観的な現実世界の様態を描写。
聞き手との共通の認識がなく、聞き手にとって新しい情報を提供(制限的)。
名詞そのものを修飾。
特定度の低い普通名詞を修飾。
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キーワード |
特定の個人、物、排他性
固有名詞の修飾が可能
相対的
非制限的
強調、注意の喚起
主観的、親愛の情、感情、詩的
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一般的な人や物、一般性
普通名詞の修飾
絶対的
制限的
様態の対比
述語的
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傾向
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当たり前の性質を深める
名詞が本来持っている当たり前の性質を表現することで、その性質をさらに深めたり、強調します。
たとえば、「白い雪」 (blanca nieve) という場合、日本語でもそうですが、「雪」は「白」と相場が決まっています。それをわざわざ「白い雪」というとき、そこには「雪の白さ」に感動を覚えているといった主観的、感情面での何かを表現したいという話者の意図が感じられます。
言い換えれば、前置は、「名詞そのもの」というより、「名詞が表す性質」を修飾すると考えることができるでしょう。
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当たり前でない様態を特定・定義する
名詞が本来持っている当たり前の性質とは別の新しい性質や、当たり前でない様態を表します。
たとえば、エメラルドはたいていグリーンですが、赤いエメラルドがあると仮定した場合、esmeralda roja と後置で表現するというわけです。
前置が名詞の性質を深めるのに対して、後置は、名詞の性質や様態を定義し、特徴付けを行い、絞り込み、特定する傾向を持っています。
言い換えれば、後置は、「名詞そのもの」を修飾すると考えることができるでしょう。
la verde esmeralda
「グリーンのエメラルド」
la esmeralda roja
「赤いエメラルド」
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既知の情報
上の傾向とも関連していますが、「雪は白い」、「エメラルドはグリーン」といった当たり前のことや一般的な共通の認識にも情報としての新規性はありません。
一般的ではなくても、聞き手との間に情報の共有(共通の視点)が出来上がっている場合にも形容詞が前置されます。
たとえば、「もう新しい家に住んでいるの?」といったようなとき、相手は「新しい家」を購入したという共通の認識があります。
また、このときの「新しい」(前に置かれた形容詞)は「新しく購入・手に入れた」という意味であり、家自体の新しさを表すとは限りません。
前置は、情報を提供するというよりも、聞き手との共通の視点を提供すると言うことができます。
Ahora vivimos en la nueva casa
「今はもう新しい家に住んでいます。」
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新規の情報を提供する
スペイン語では、新しい情報は後に出てくるという傾向があると言われますが、形容詞も名詞の後に置くことで、聞き手の知らなかった新しい情報を提供するという傾向があります。
たとえば、「花」 (flor) があるとして、その花がどんな花なのか、花にはいろんな花がありますので、白い花だとか赤い花だというふうに、言わなければ相手にはわからない様態を描写する場合です。
ちなみに、「新しい家」を後置で表現すると、家自体が新しい(新築の家)といった意味になります。
la flor amarilla
「黄色の花」
la nueva casa
「新しく手に入れた(今度の)家」
la casa nueva
「新しい(新築の)家」
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感情、強調を表す
主観的な傾向があるため、話者の感情、親愛の情、聞き手の注意を喚起する意図を含めることができます。
たとえば、客観的な事実として「古い庭」といった庭自体の古さを表すには、un jardín viejo と後置で表現しますが、「(古くからある)愛着のある庭」というときには、un viejo jardín と前置で表現することで個人的な感情を含むことができます。
また、前置することで、名詞と形容詞で表される名詞句を強調することができます。
el viejo jardín
「愛着のある庭」
el jardín viejo
「その古い庭」
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様態の対比
形容詞を後置することで、名詞を特徴付け、特定することができるため、他の名詞句に対する差別化がより強調されます。
たとえば、「黒猫」に対して「白猫」など、名詞の様態を対比させることができます。
Un gato blanco y un gato negro estaban paseando.
「白猫と黒猫が歩いていた。」
la sangre roja en la nieve blanca
「白い雪の上の赤い血」
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特定の人、物の存在を仮定している
主観的、ある視点が存在しているという前置の傾向と関連しますが、話者の意識の中にすでに存在している人や物がすでにある場合は前置の傾向があります。
たとえば、「どこかに優れた先生がいるはずだ」といったような場合で、話し手の意識の中にある特定の優れた先生について具体的な例が存在しているときなどは、un excelente profesor と形容詞を前に置く傾向があります。
Tiene que haber un excelente profesor por algún lugar.
「どこかに優れた先生がいるはずだ」
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特定せず、広く一般的な人、物
前置に対して、話者の意識の中に特定の具体例がなく、広く一般的な内容を指す場合は、形容詞は名詞の後に置かれる傾向があります。
ちなみに、前置の例で挙げた「優れた先生」ですが、「どこかに優れた先生がいると思います」というような場合は、「思う」という動詞の意味合いからしても、特定の例が意識にあるわけではないため、「優れた」という形容詞は名詞の後に置くのが自然です。
Creo que hay un profesor excelente por algún lugar.
「どこかに優れた先生がいると思うよ」
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相対的な性質・様態を表す
主観的、ある視点が存在しているということは、つまり、話者が表現している性質や様態は、そういった視点、観点からみた「相対的」なものであるということが言えます。
たとえば、前置で、una buena amiga「彼女は良い友達だ」といったとき、それは、あくまでも、話し手にとって「良い友達」なのであり、他の人にとっては悪い友達でもある可能性があるわけです。つまり、ここでいう「良い」とは、人間性として善良ということではなく、「親友」のようなニュアンスだと言えるでしょう。
Ella es una buena amiga.
「彼女は良い(仲の良い)友達だ」
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絶対的な性質・様態を表す
前置に対して、ある視点や主観が介在しないわけですから、話者は、名詞の一般的な(絶対的な)性質・様態を述べていることになります。
前置の例の「良い友達」は、特定の誰かにとって「良い」というよりも、たとえば、思いやりがあるとか信頼できるといった人格を持っているなど、誰にとっても「良い友達」であるという意味合いを含んでいると言えます。
Ella es una amiga buena.
「彼女は良い友達だ」
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差異の無い場合
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新聞などの見出し。読者はすでにその出来事について知っているという前提も可能なため、前置されることもある。
posibleやfuturo、lentoなどの形容詞はどちらの場合でも差異がない。
すでに慣例的に名詞と形容詞がセット化して使われているものもある。
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