かって製材所があった…![]() ![]() ![]() ![]() そうして、さらに幾星霜。主も後期高齢者となり、製材の仕事も来なくなった。しかし、製材所はまだそこにあり、昔からそうであったように、そこが唯一の居場所であったかのように、主は毎日、一日中そこで過ごした。おそらく、暑い日は、工場を駆け抜ける涼風に吹かれながら、寒い日は、車の中でぽかぽかと暖かい冬の陽射しを浴びながら…。何を考えていたのか、それとも何も考えていなかったのか、それはわからない。ともかく製材所はあった。主とともにそのまま存在し続けた。 数年後、主は旅立った。しかし、製材所は残った。もう二度と機械のボタンを押し、ノコを回す者もいない。それでも製材所は無くならなかった。 それから二年経ったある秋の日のこと。竜巻のような大きな台風がやって来た。一瞬のうちに工場の屋根が飛び、建物が崩壊した。製材所は無くなった。主の後を追うように、永遠に姿を消すことになったのである。 ![]() |